病院・医療法人のM&Aとは?承継方法・メリット・手続きを解説
- 7月21日
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病院・医療法人業界のM&Aとは、病院や診療所、医療法人などの経営権や事業を、第三者である医療法人や医師などへ承継することです。
院長や理事長の高齢化、後継者不在、人材不足、設備更新への負担、経営基盤の強化などを背景として検討されます。
医療機関は一般企業と異なり、患者さんの診療を継続し、職員の雇用や地域医療を守るという重要な役割を担っています。そのため、病院・医療法人のM&Aでは、単に資産や経営権を売買するだけではなく、医療を途切れさせずに次の経営者へ引き継ぐことが大切です。
病院と診療所の違い
医療法では、20人以上の患者を入院させる施設を「病院」、入院施設を持たない、または19人以下の患者を入院させる施設を「診療所」と定めています。
一般的には、次のように区分されます。
医療機関 | 病床数 |
病院 | 20床以上 |
有床診療所 | 1~19床 |
無床診療所 | 病床なし |
病院の開設には都道府県知事の許可が必要です。医療法人が開設する診療所についても、開設者の変更や法人の変更を伴う場合には、行政機関との事前相談や開設関係の手続きが必要になることがあります。
医療法人のM&Aが一般企業と異なる理由
株式会社のM&Aでは、株式を取得することで経営権を取得する方法が一般的です。
一方、医療法人には株式会社のような株式がありません。また、医療法人は剰余金の配当が禁止されている非営利法人です。したがって、医療法人の承継では、法人の種類や定款、出資持分の有無を確認したうえで、社員・役員の交代、出資持分の譲渡、事業譲渡、合併などの方法を組み合わせて進めます。
なお、医療法人における「社員」とは、一般企業の従業員ではなく、社員総会で議決権を持つ法人の構成員を意味します。
病院・医療法人のM&Aが検討される主な理由
後継者がいない
院長の子どもが医師でなかったり、医師であっても診療科や勤務地が異なったりするため、親族内承継が難しいケースがあります。
廃院を選択すると、患者さんの通院先や職員の雇用、地域の医療提供体制に影響が生じます。
第三者承継を活用すれば、親族に後継者がいない場合でも医療機関を残せる可能性があります。
経営基盤を強化したい
電子カルテ、CT、MRI、内視鏡、手術設備などの更新には、大きな資金が必要です。
規模の大きい医療法人の傘下に入ることで、資金調達、採用、共同購買、医療DX、経理・労務管理などを効率化できる可能性があります。
医師や医療従事者を確保したい
病院や診療所の運営には、医師だけでなく、看護師、薬剤師、診療放射線技師、臨床検査技師、リハビリ職、医療事務などの確保が欠かせません。
M&Aによって複数の医療機関が連携すれば、人材採用や応援体制を強化できる場合があります。
地域医療を維持したい
医療機関の閉鎖は、地域住民の受診機会だけでなく、救急医療、在宅医療、リハビリ、介護施設との連携にも影響を与えます。
厚生労働省の調査でも、後継者不在の病院を他の医療法人が承継し、病床機能の再編や地域包括ケア機能の強化につなげた事例が紹介されています。
病院・医療法人M&Aの主な方法
1.社員・役員の交代による経営権の承継
医療法人そのものを存続させながら、社員や理事、理事長などを交代し、法人の経営を新しい運営者へ引き継ぐ方法です。
法人格や医療機関の開設主体が維持されるため、事業譲渡に比べて契約関係を継続しやすい場合があります。
ただし、定款、社員構成、役員構成、金融機関の借入れ、連帯保証、出資持分などを詳細に確認する必要があります。
2.出資持分の譲渡
「持分あり医療法人」の場合、出資者が保有する出資持分を譲渡する方法があります。
ただし、出資持分は財産的な権利であり、出資持分を取得しただけで当然に医療法人の経営権を取得できるわけではありません。社員や役員の交代を含めて、全体の承継方法を設計する必要があります。
また、持分評価によっては、譲渡所得税や相続税、贈与税などの税務問題が生じる可能性があります。
3.事業譲渡
病院や診療所の土地・建物、医療機器、棚卸資産、職員、取引契約など、必要な事業を選択して別の法人へ譲渡する方法です。
譲受側が必要な資産や事業だけを選べる点がメリットですが、契約や債務は原則として個別に承継手続きを行います。
開設者が変更される場合、従来の医療機関を廃止し、新しい開設者による開設許可・届出や保険医療機関の指定手続きが必要になることがあります。
4.医療法人同士の合併
複数の医療法人を一つの医療法人に統合する方法です。吸収合併と新設合併があります。
合併では、消滅する医療法人の権利や義務を存続法人または新設法人が包括的に承継します。ただし、医療法人の合併には都道府県知事等の認可や、債権者保護手続きなどが必要です。
売り手側のメリット
売り手である病院・診療所・医療法人には、次のようなメリットがあります。
後継者がいなくても医療機関を存続できる
職員の雇用を維持できる可能性がある
患者さんの診療を継続できる
個人保証や借入金を整理できる可能性がある
引退時期や引継ぎ期間を計画できる
医療機器や不動産などの資産を有効活用できる
長年地域で築いてきた医院名や診療方針を、一定期間残す条件を設定することも可能です。
買い手側のメリット
買い手側には、次のようなメリットが期待できます。
新規開業より早く診療を開始できる可能性がある
既存の患者基盤や地域での認知を承継できる
経験のある職員を引き継げる可能性がある
医療機器や内装設備を活用できる
新しい診療圏へ進出できる
診療科や病床機能を拡充できる
ただし、患者数や売上だけを見るのではなく、職員の定着状況、設備更新費用、施設基準、賃貸借契約、医療事故・訴訟、未払残業代、借入金なども確認する必要があります。
病院・医療法人M&Aの一般的な流れ
1.相談と現状整理
承継の目的、希望時期、譲渡後の勤務、医院名の継続、職員の雇用、希望金額などを整理します。
2.資料収集と価値の検討
決算書、レセプト情報、患者数、診療単価、医療機器、不動産、借入金、賃貸借契約、職員構成などを確認します。
3.買い手候補の探索
診療科、地域、法人規模、経営方針などを踏まえて、承継先候補を探します。医療機関のM&Aでは、情報が外部に漏れると職員や患者さんが不安を感じるため、秘密保持が特に重要です。
4.基本合意
譲渡方法、予定価格、スケジュール、独占交渉期間などについて基本合意書を締結します。
5.デューデリジェンス
財務・税務・法務・労務・医療行政・不動産・医療安全などの調査を行います。
6.最終契約と行政手続き
調査結果を踏まえて最終条件を決定し、契約を締結します。並行して、都道府県、保健所、地方厚生局などとの相談や申請を進めます。
厚生労働省の事例でも、早い段階から都道府県担当者へ相談し、定款変更、開設許可、地域医療構想に関する調整などを進めています。
7.引継ぎと統合
職員、患者さん、取引先、地域の医療機関などへ適切なタイミングで説明し、診療が混乱しないように引継ぎを行います。
M&Aを成功させるためのポイント
価格だけで承継先を選ばない
医療機関の承継では、譲渡価格だけでなく、診療方針、職員の雇用、患者対応、地域医療への考え方なども重要です。
行政機関へ早めに相談する
医療法人の種類、承継方法、病床、開設地域によって必要な手続きが異なります。契約を締結してから許可上の問題が判明すると、予定日に承継できない可能性があります。
職員への説明時期を慎重に決める
説明が早過ぎると情報漏えいや退職につながり、遅過ぎると職員の不信感を招くおそれがあります。雇用条件と説明方法を事前に準備することが大切です。
適正な譲渡価格を算定する
医療機関の価値は、土地・建物や医療機器だけでは決まりません。
収益力、患者基盤、診療圏、職員体制、医療設備、借入金、将来必要になる設備投資などを総合的に検討します。
病院・医療法人の承継はドクターエージェントへ
株式会社ドクターエージェントでは、病院、診療所、医療法人、歯科医院、介護施設などの事業承継・M&Aについてご相談を承っています。
医療機関の承継には、経営や財務だけでなく、医療法、行政手続き、医師・医療従事者の確保、不動産、医療機器、地域医療との関係など、幅広い視点が必要です。
「後継者がいないが、すぐに廃院するつもりはない」
「職員と患者さんを大切にしてくれる相手へ引き継ぎたい」
「医療法人を承継して診療エリアを広げたい」
「まだ具体的に決めていないが、将来の選択肢を知りたい」
このような段階からでもご相談いただけます。秘密を厳守し、医療機関ごとの状況やご希望に応じた承継方法を検討します。
まとめ
病院・医療法人のM&Aは、単なる法人や施設の売買ではありません。
患者さんの診療、職員の雇用、医療機関の理念、地域で築いてきた信頼を次の世代へつなぐ、重要な事業承継です。
一方で、医療法人の形態や出資持分の有無、開設許可、保険医療機関の指定、病床、雇用契約など、多くの確認事項があります。
廃院や承継を決断する直前ではなく、選択肢を確保できる早い段階から準備することが、より良い承継につながります。
※本記事は一般的な情報を提供するものであり、個別案件の法務・税務判断を行うものではありません。実際のM&Aでは、行政機関、弁護士、税理士、社会保険労務士などの専門家への確認が必要です。
