【実例公開】中小企業にはびこる「社長メール詐欺」
- 7月21日
- 読了時間: 9分

LINEのQRコード提出を求めるメールに注意してください
こんにちは。株式会社ドクターエージェント代表取締役の金田一成です。
先日、当社の代表アドレス宛てに、私の名前を勝手に使用した詐欺メールが届きました。
メールの件名は、
LINE連絡先提出のお願い(全社員)
というもので、送信者の表示名には「金田一成」と記載されていました。
しかし、送信元のメールアドレスを確認すると、当社とも私個人とも関係のない「outlook.com」のフリーメールでした。
メールには、次のような内容が書かれていました。
業務連絡用LINE登録のお願いです。自分のLINE QRコードを返信ください。確認後、順次追加します。
これは、経営者や社長になりすまして社員をだます、いわゆる「ニセ社長詐欺」「社長メール詐欺」と呼ばれる手口です。
警察庁とIPA(情報処理推進機構)も、2026年に相次いで注意喚起を行っています。
実在する社長名や会社名を使って社員を信用させ、LINEなどのSNSグループを作成させた後、口座残高を聞き出したり、緊急の送金を指示したりする事例が確認されています。
社長メール詐欺とは
社長メール詐欺とは、実在する会社の社長、役員、上司などになりすまし、社員に不正な指示を出す詐欺です。
ビジネスメール詐欺を意味する「BEC(Business Email Compromise)」の一種で、IPAでは「経営者等へのなりすまし」に分類されています。
犯人は、会社のホームページ、採用情報、SNS、登記情報など、インターネット上に公開されている情報から、次のような内容を調べていると考えられます。
会社名
代表者名
役員名
代表メールアドレス
社員や部署の名称
取引先や事業内容
つまり、会社のシステムへ侵入されていなくても、公開情報だけを使って社長になりすますことができるのです。

今回届いた詐欺メールの特徴
今回、株式会社ドクターエージェントに届いたメールには、典型的な特徴がありました。
1.送信者名だけが「金田一成」になっている
メール画面には社長の名前が表示されていますが、重要なのは表示名ではなく、実際のメールアドレスです。
今回の送信元は、私が使用していないフリーメールでした。
IPAも、ニセ社長詐欺では、差出人の表示名に実在する社長や社員の名前を使いながら、実際にはOutlook、Hotmail、Gmailなどのフリーメールから送信されるケースがあると注意を呼びかけています。
2.個人のLINE QRコードを要求している
通常の業務で、社長が突然、全社員に対して個人LINEのQRコード提出を求めることはありません。
犯人の目的は、メールからLINEなどの閉鎖された場所へ社員を移動させ、周囲に気づかれにくい状態で指示を出すことです。
3.所属部署と役職を聞き出そうとしている
社員の所属部署や役職を収集することで、経理担当者、財務担当者、銀行振込の権限を持つ社員を特定しようとしている可能性があります。
4.「今後の業務連絡」という自然な理由をつけている
「業務連絡を円滑にするため」「新しいプロジェクトのため」といった、もっともらしい理由が使われます。
警察庁が公表している手口でも、SNSグループを作成させ、招待用QRコードを返信させた後、振込権限を持つ担当者をグループへ参加させる流れが確認されています。
LINEへ移動した後に何が起こるのか
最初のメールだけでは、金銭の振込を直接要求しないケースがあります。
まずLINEグループを作らせ、社員を安心させた後、段階的に指示を強めていきます。
典型的な流れは次のとおりです。
社長名でメールを送る
LINEグループの作成を指示する
社員のQRコードや所属部署を集める
経理・財務担当者をグループへ参加させる
会社の口座残高や振込可能額を確認する
「至急」「秘密の案件」などと言って送金を指示する
IPAは、作成させたLINEグループ内で社長になりすまし、多額の振込を業務として指示する事例を確認しています。
「まだ振込を求められていないから安全」と考えてはいけません。
LINEのQRコードを提出させる段階から、詐欺はすでに始まっています。
不審な社長メールが届いたときの対応
返信しない
確認のためであっても、届いたメールにそのまま返信してはいけません。
返信すると、現在使われているメールアドレスであることや、社員がメールを読んでいることを相手に知らせる結果になります。
QRコードや個人情報を送らない
LINEのQRコード、携帯電話番号、所属部署、役職、社内連絡網、口座情報などを送信しないでください。
メールとは別の方法で本人へ確認する
社長や上司へ確認する場合は、メール本文に書かれた電話番号ではなく、普段使用している電話番号、社内チャット、対面など、既知の連絡手段を使います。
警察庁も、メールに記載された連絡先は偽装されている可能性があるため、名刺や自分のアドレス帳などに登録されている連絡先で確認するよう案内しています。
メールを削除する前に証拠を保存する
次の情報を保存してください。
メール本文
送信元メールアドレス
件名
受信日時
メールヘッダー
添付ファイル名
LINEなどでのやり取りのスクリーンショット
その後、社内の責任者やシステム担当者へ報告し、同様のメールがほかの社員にも届いていないか確認します。
QRコードを送ってしまった場合
LINEのQRコードなどを送信してしまった場合は、次の対応を速やかに行ってください。
相手を友だち追加しない
作成されたグループから退出する
相手のアカウントを通報・ブロックする
LINEの友だち追加用QRコードを更新する
社内の責任者へ報告する
送信した情報の内容を記録する
機密情報や個人情報の漏えいに当たるか確認する
個人データを第三者に誤送信した場合や、不正アクセスによって外部へ流出した場合は、個人情報保護法上の「漏えい」に該当することがあります。送信した内容によって判断が異なるため、社内の個人情報管理責任者や専門家への確認が必要です。
お金を振り込んでしまった場合
送金してしまった場合は、時間との勝負です。
直ちに次の対応を行ってください。
振込元の金融機関へ連絡する
送金の停止、組戻しを依頼する
メールとSNSの証拠を保存する
最寄りの警察署やサイバー犯罪相談窓口へ相談する
メールアカウントのパスワードを変更する
不正な転送設定やログイン履歴を確認する
警察庁も、送金後は速やかに金融機関へキャンセルや組戻しを依頼し、攻撃者から届いたメールやメールヘッダーを保存した上で、警察へ相談するよう案内しています。
警察相談専用電話は**「#9110」**です。緊急性が高い場合は、金融機関と警察の両方へすぐに連絡してください。
中小企業が今すぐ決めるべき社内ルール
大企業だけでなく、中小企業、医療法人、クリニック、介護施設、人材派遣会社なども標的になります。
特に、社長と社員の距離が近く、普段からLINEで連絡している企業では、偽の指示を信じてしまう危険性があります。
最低限、次のルールを社内で共有してください。
社長からのメールでも必ず確認する
「社長の名前だから本物」と判断せず、送信元アドレスまで確認します。
メールだけで送金を決定しない
振込先の変更、新規口座への送金、高額送金、緊急送金は、電話や対面による本人確認を必須にします。
振込は必ず二人以上で承認する
担当者一人の判断で送金できない承認フローを作ります。IPAも、振込支払いに関する二重チェックなどの承認体制を推奨しています。
個人LINEを正式な送金指示に使用しない
財務・経理に関する重要な指示は、会社が管理する連絡手段に限定します。
不審メールの報告先を決める
社員が「怪しい」と感じたとき、誰へ報告するのかを明確にします。報告した社員を責めないことも重要です。
技術面で行いたい対策
社内ルールとともに、次の対策も検討する必要があります。
メールとクラウドサービスへの多要素認証
パスワードの使い回し禁止
不審な自動転送設定の定期確認
SPF、DKIM、DMARCの設定
OSやセキュリティソフトの更新
社員向けの定期的な訓練
経営者と役員の正式なメールアドレスの周知
警察庁は、企業ドメインのなりすまし防止策として、SPF、DKIM、DMARCなどの送信ドメイン認証技術の導入を推奨しています。特にDMARCでは、認証に失敗したメールをどのように扱うか、送信側で方針を指定できます。
代表取締役・金田一成から皆さまへ
今回のメールは、私の氏名と会社の公開メールアドレスを利用したものでした。
社員が送信元アドレスを確認し、私本人へ別の方法で確認してくれたため、被害はありませんでした。
しかし、内容をよく読まずにLINEのQRコードを返信していたら、経理担当者などが偽のグループへ誘導され、さらに大きな被害へ発展していた可能性があります。
社長メール詐欺は、パソコンに詳しいかどうかだけの問題ではありません。
「社長からの指示には早く対応しなければならない」「疑うと失礼になるのではないか」「自分だけ確認に時間をかけられない」
こうした社員の責任感や心理を利用する犯罪です。
社長や経営者自身が、日頃から社員へ、
私の名前であっても、不自然な指示は必ず確認してください。
と伝えておくことが、何より大切です。
横浜・神奈川・静岡をはじめ、全国の中小企業、医療機関、介護施設の皆さまにも、今回の実例を社内で共有していただければと思います。
社長の名前が表示されていても、社長本人とは限りません。LINEのQRコード提出、秘密のグループ作成、緊急送金を求めるメールには、十分にご注意ください。
執筆者株式会社ドクターエージェント代表取締役 金田一成
最終更新日:2026年7月21日
よくある質問
社長の名前で届いたメールは本物ですか?
表示名だけでは判断できません。実際の送信元メールアドレスを確認し、普段使用している電話や社内チャットで本人に確認してください。
LINEのQRコードを送るだけでも危険ですか?
危険です。偽のLINEグループへ誘導し、経理担当者の特定や送金指示につなげる手口が確認されています。
社長メール詐欺とビジネスメール詐欺の違いは何ですか?
社長メール詐欺は、ビジネスメール詐欺の一種です。経営者や役員になりすまして社員へ不正な指示を出す手口を指します。
不審なメールに返信してしまいました。どうすればよいですか?
それ以上やり取りせず、社内責任者へ報告してください。送信した情報を確認し、必要に応じてパスワード変更やアカウントのログイン履歴確認を行います。
送金してしまった場合、どこへ相談すればよいですか?
直ちに振込元の金融機関へ連絡して組戻しを依頼し、メールなどの証拠を保存して警察へ相談してください。
私は基本はネット等で顔出し等しないようにしてます。
私さえ問題なければ気を付ければ問題ないことなんです。
