【令和8年度診療報酬改定】診療所のBCPは日本医師会のひな形でOK!機能強化加算・在宅療養支援診療所の新要件を解説
- 3 日前
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令和8年度診療報酬改定では、機能強化加算および在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院
について、新たに業務継続計画(BCP)の策定が施設基準上の要件として加わりました。
そこで現場から出ていたのが、
「厚生労働省の手引きを一から読んでBCPを作らなければいけないのか?」
という疑問です。
今回の「疑義解釈資料の送付について(その12)」で、その答えが明確になりました。
結論:日本医師会のBCPひな形を参考にしてOK
厚生労働省は、
日本医師会が作成した「診療所用業務継続計画(BCP)のひな形」を参考としてもよい
と明確にしています。(厚生労働省)
つまり診療所がゼロから独自にBCPを作る必要はなく、日本医師会が公開しているひな形をベースに作成することができます。
これは特に小規模なクリニックにとって、かなり大きな負担軽減になるでしょう。
そもそもBCPとは?
BCPとは、
Business Continuity Plan(事業継続計画)
の略です。
医療機関の場合は、地震・台風・水害などの大規模災害が発生したときに、
「診療をどう継続するのか」
「スタッフが集まらない場合はどうするのか」
「停電したらどうするのか」
「患者情報をどう守るのか」
「在宅患者をどう支援するのか」
といった対応をあらかじめ決めておく計画です。
つまり、
災害が起きてから考えるのではなく、起きる前に院内の対応を決めておく
ということです。
日本医師会は診療所向けのひな形を公開
日本医師会は2026年8月、診療所向けのBCPひな形を公開しています。
用意されているのは主に、
BCPの白紙様式
外来診療のみを行う医療機関向けの記載例
在宅医療を行う医療機関向けの記載例
です。
日本医師会自身も、このテンプレート通りの内容でなければ診療報酬上の要件を満たさないというものではなく、各医療機関の建物・立地・規模・診療内容などに応じて取捨選択して使うよう案内しています。(日本医師会)
これはかなり使いやすいと思います。
ただし「ダウンロードしただけ」ではダメ
今回の疑義解釈で一番重要なのはここです。
厚労省は、
ひな形を使ってよい
とはしていますが、
そのまま何も変更せず保存すればよい、とはしていません。
各医療機関や地域の状況に合わせて、
必要な内容を追加・削除して作成する
ことが求められています。
つまり、
「日本医師会のWordファイルをダウンロードした」
↓
「クリニック名だけ入れた」
↓
「完成」
では不十分になり得ます。
自院の状況を入れることが重要
例えばBCPには、少なくとも自院の実態に合わせて、
災害時の責任者
職員への連絡方法
避難場所
停電時の対応
電子カルテが使用できない場合の対応
医薬品・医療材料の確保
患者への連絡方法
などを検討しておく必要があります。
クリニックがある場所によってもリスクは違います。
例えば、
河川の近くなら水害、
海沿いなら津波、
高層ビルならエレベーター停止、
地下フロアなら浸水、
といった地域・建物特有のリスクがあります。
つまり、
BCPは「全国共通の正解を作る」のではなく、「自院が災害時に本当に動ける計画を作る」ことが重要
ということです。
市町村の避難計画なども確認
厚生労働省は今回、
地域の特性や市町村の個別避難計画等も踏まえる
よう求めています。
ここも見落としやすいポイントです。
院内だけでBCPを考えるのではなく、
自治体のハザードマップ
指定避難所
津波避難区域
洪水浸水想定区域
地域の災害医療体制
なども確認しておいたほうがよいでしょう。
在宅療養支援診療所ではさらに重要
在宅療養支援診療所の場合は、外来だけのクリニックよりBCPの重要性が高くなります。
災害時でも、
在宅酸素療法中の患者
人工呼吸器使用患者
経管栄養患者
終末期患者
独居高齢者
などへの対応が必要になる可能性があります。
そのため、
「クリニックをどう再開するか」だけでなく、「在宅患者をどう守るか」
まで想定しておく必要があります。
日本医師会が「在宅医療を実施する医療機関向け」の記載例を別途用意しているのも、このためでしょう。(日本医師会)
作っただけではダメ。「職員への周知」が必要
今回の疑義解釈でもう一つ重要なのが、
作成したBCPを職員に適切に周知すること
です。
院長だけがBCPのファイルを持っていても意味がありません。
実際に災害が発生したとき、
受付スタッフ、
看護師、
医療事務、
技師、
医師などが、
「自分は何をすればいいのか」
を理解している必要があります。
そのため、
院内会議で説明する
スタッフが閲覧できる場所に保管する
緊急連絡網を共有する
など、実際の運用まで考えておく必要があります。
BCPは一度作れば終わりではない
厚生労働省は、
作成した業務継続計画は定期的に更新することが望ましい
ともしています。
例えば、
院長が変わった、
スタッフが増えた、
電子カルテを変更した、
クリニックを移転した、
災害時の連絡先が変わった、
新しい医療機器を導入した、
などの場合は、BCPも見直す必要があります。
少なくとも年に一度程度、
「このBCPは現在のクリニックの状況に合っているか?」
を院内で確認する運用を作っておくとよいでしょう。
重要:令和9年5月31日までの対応を確認
日本医師会によると、令和8年度診療報酬改定では、機能強化加算や在宅療養支援診療所等について、令和9年5月31日までにBCPを策定し、その計画に従って必要な措置を講じること等が施設基準に追加されています。(日本医師会)
つまり、
「そのうち作ればいい」ではなく、期限を意識して準備する必要があります。
特に機能強化加算を算定している一般的な診療所でも対象になるため、在宅専門クリニックだけの話ではありません。
ドクターエージェントの考察
今回の疑義解釈によって、
「どの様式で作ればいいのかわからない」
という医療機関の負担はかなり軽くなったと考えます。
日本医師会のひな形を使えることが正式に明確になったからです。
一方で注意したいのは、
BCPの“書類を持っていること”だけが目的ではない
という点です。
重要なのは、
実際に災害が発生したときに、その計画を使ってクリニックが動けるか
です。
したがって、
「テンプレートをダウンロードして保管」
ではなく、
ひな形をダウンロード↓自院用に変更↓院内で確認↓職員へ周知↓定期的に更新
という流れまで作ることが大切です。
特に「個別具体的な記載」が重要になる
今後、施設基準の確認などが行われることを考えると、
BCPには具体性を持たせておいたほうがよいでしょう。
例えば、
「災害時には職員へ連絡する」
だけではなく、
誰が、どの方法で、誰に連絡するのか
まで決めておく。
「患者を避難させる」
ではなく、
どこへ避難させるのか
を決めておく。
このように、
実際に動けるレベルまで具体化する
ことが本当のBCP対策だと思います。
まとめ
今回の疑義解釈その12では、機能強化加算・在宅療養支援診療所等に必要となるBCPについて重要な取扱いが明確になりました。
ポイントは次の5つです。
日本医師会の「診療所用BCPひな形」を参考にしてよい
ひな形をそのまま使うのではなく、自院・地域の状況に合わせて変更する
市町村の個別避難計画など地域の防災計画も考慮する
作成したBCPを職員へ適切に周知する
作成後も定期的に更新することが望ましい
つまり一言でいえば、
「日本医師会のひな形でOK。ただしコピペで終わらせず、自院仕様にして職員全員で使えるBCPにする」
ということです。
令和8年度診療報酬改定では、単に診療を行う体制だけではなく、災害時にも医療を継続できる体制そのものが施設基準として評価される時代になってきたと考えられます。
