【令和8年度診療報酬改定】医師・薬剤師の「同時訪問」を新評価!300点・150点の算定要件を徹底解説
- 2 日前
- 読了時間: 14分

先に重要ポイント
令和8年度(2026年度)診療報酬改定では、在宅医療における医師と薬剤師の同時訪問が、新たに診療報酬・調剤報酬の双方で評価されました。
新設された点数は、次の2つです。
算定する側 | 新設された点数 | 点数・回数 |
医療機関・医師側 | 訪問診療薬剤師同時指導料 | 300点・6月に1回 |
保険薬局・薬剤師側 | 訪問薬剤管理医師同時指導料 | 150点・6月に1回 |
つまり、一定の要件を満たした場合には、医療機関側は300点、薬局側は150点をそれぞれ算定できる仕組みです。
単に医師と薬剤師が同じ日に訪問すればよいわけではありません。患者の同意、対象患者、医師と薬剤師の所属、共同で行う内容、記録など、細かな要件が定められています。
なぜ、医師と薬剤師の「同時訪問」が評価されたのか
在宅医療では、患者が実際にどのように薬を飲んでいるのかを、診察室と同じように把握することは簡単ではありません。
よくある問題として、次のようなものがあります。
飲み忘れによる大量の残薬
複数の医療機関から処方された薬の重複
患者自身が薬を中断している
錠剤が大きく、実際には飲めていない
服用時間や回数が生活リズムに合っていない
副作用が疑われても、患者が医師に伝えていない
家族や介護者が服薬管理に困っている
一包化されていても正しく服用できていない
これまでも、医師は訪問診療を行い、薬剤師は在宅患者訪問薬剤管理指導や居宅療養管理指導を行ってきました。
しかし、訪問日が別々の場合、薬剤師が残薬や副作用、服薬困難などの問題を発見しても、処方変更には医師への連絡や次回の診察が必要となり、対応に時間差が生じることがありました。
今回の改定では、医師と薬剤師が同時に患者宅を訪れ、その場で残薬や服薬状況を確認し、処方内容や剤形、用法などを協議することを評価します。
厚生労働省は、この新設の目的を、在宅医療におけるポリファーマシー対策と残薬対策の推進としています。
1.医療機関側の新設点数
「訪問診療薬剤師同時指導料」300点
医師・医療機関側に新設されたのが、訪問診療薬剤師同時指導料です。
点数 300点
算定回数 6月に1回
「月6回」ではなく、6か月に1回である点に注意が必要です。
医療機関側の主な算定要件
医療機関が訪問診療薬剤師同時指導料を算定するためには、主に次の要件を満たす必要があります。
① 医療機関が在宅時医学総合管理料を算定している
医師が所属する医療機関において、対象患者について在宅時医学総合管理料を算定していることが必要です。
したがって、すべての訪問診療患者が対象になるわけではありません。
② 薬剤師は別の医療機関または保険薬局に所属している
同時訪問する薬剤師は、医師と同じ医療機関ではなく、原則として別の保険医療機関または保険薬局に所属する薬剤師です。
その薬剤師が、対象患者について次のいずれかを算定している必要があります。
在宅患者訪問薬剤管理指導料
居宅療養管理指導費(薬剤師が行う場合)
③ 事前に患者の同意を得る
医師と薬剤師が同時訪問することについて、事前に患者または家族等の同意を得なければなりません。
④ 医師と薬剤師が患家へ同時に訪問する
医師と薬剤師が患者宅を実際に同時訪問し、処方調整などの必要な対応を共同で行います。
オンラインでの参加や、同じ日に時間をずらして別々に訪問した場合については、「同時訪問」の要件を満たすとは限らないため注意が必要です。
⑤ 生活実態を踏まえて薬物療法を検討する
患家において、医師と薬剤師が次のような事項を確認・協議します。
残薬の量と保管状況
実際の服薬状況
飲み忘れや重複服用
副作用の初期症状
錠剤、散剤、液剤など剤形の適否
服用回数や服用時間
一包化の必要性
家族・介護者による管理状況
処方薬を減量・中止・変更する必要性
必要に応じて、医師は処方設計を見直し、薬剤師は服薬方法や薬剤管理方法について即時に支援します。
処方変更がなくても算定できる
この点は非常に重要です。
医師と薬剤師が協議した結果、現在の処方を継続することが適切と判断され、処方内容を変更しなかった場合でも算定できます。
この点数は、薬を減らしたこと自体への成功報酬ではありません。
医師と薬剤師が患者宅で生活実態を確認し、薬物療法の妥当性を共同で検討したプロセスを評価する点数だからです。
診療録への記載が必要
医療機関側では、少なくとも次の内容を診療録へ記載する必要があります。
医師と薬剤師が共同で行った指導内容
確認した残薬・服薬状況
協議した内容
処方薬を調整した場合は、その要点
処方変更を行わなかった場合は、その判断理由
患者・家族に説明した内容
単に「薬剤師と同時訪問」とだけ記載するのでは不十分と考えられます。
何を確認し、何を協議し、どのような判断をしたのかが分かる記録を残すことが重要です。
退院後1か月以内の取扱いに注意
当該医療機関を退院した患者に対し、退院日から起算して1か月以内に行った指導の費用は、入院基本料に含まれる取扱いとされています。
自院から退院した患者に対して算定を検討する場合は、退院日を必ず確認する必要があります。
2.薬局側の新設点数
「訪問薬剤管理医師同時指導料」150点
薬剤師・保険薬局側には、訪問薬剤管理医師同時指導料が新設されました。
医療機関側の「訪問診療薬剤師同時指導料」と名称がよく似ているため、取り違えに注意してください。
点数 150点
算定回数 6月に1回
薬局側の主な算定要件
① 在宅療養中で通院が困難な患者
対象となるのは、在宅で療養しており、通院が困難な患者です。
② 患者または家族等の同意を得る
薬剤師が医師と同時訪問することについて、事前に同意を得ます。
③ すでに訪問薬剤管理指導等を行っている
対象患者について、薬剤師が次のいずれかを行っている必要があります。
在宅患者訪問薬剤管理指導
在宅患者緊急訪問薬剤管理指導
居宅療養管理指導
介護予防居宅療養管理指導
④ 主治医と同時に患者宅を訪問する
同時訪問する医師は、単なる関係医師ではありません。
医師が所属する医療機関において、対象患者について在宅時医学総合管理料を算定しており、当該患者の主治医であることが求められます。
⑤ 薬学的管理・指導を実施する
医師に同行しただけでは算定できません。
薬剤師として、服薬状況、残薬、副作用、相互作用、服薬方法などを確認し、必要な薬学的管理および指導を行う必要があります。
原則として「個人宅への訪問」が対象
薬局側の算定対象は、該当する訪問薬剤管理指導料や居宅療養管理指導費を算定する患者のうち、個人宅への訪問の場合に限定されています。
厚生労働省の資料では、単一建物診療患者または単一建物居住者が1人の場合などが対象として示されています。
高齢者施設などで多数の入居者に対して行う一斉の訪問を、そのまま本指導料の対象にできるわけではありません。
同日に算定できない点数がある
薬局側では、次の指導等を同日に行った場合、訪問薬剤管理医師同時指導料を算定できません。
在宅患者緊急時等共同指導料
在宅移行初期管理料に係る必要な指導等
同日算定の可否を確認せずに請求すると、返戻・査定の原因になり得るため、レセプト作成時のチェックが必要です。
3.医師側と薬剤師側の違いを比較
比較項目 | 医療機関側 | 薬局側 |
正式名称 | 訪問診療薬剤師同時指導料 | 訪問薬剤管理医師同時指導料 |
点数 | 300点 | 150点 |
算定回数 | 6月に1回 | 6月に1回 |
算定者 | 保険医療機関 | 保険薬局等 |
医師の条件 | 在宅時医学総合管理料を算定する訪問診療医 | 在宅時医学総合管理料を算定する医療機関の主治医 |
薬剤師の条件 | 別の医療機関または薬局で訪問薬剤管理指導等を担当 | 対象患者に訪問薬剤管理指導等を実施 |
患者同意 | 必要 | 必要 |
同時訪問 | 必要 | 必要 |
処方変更 | 変更なしでも算定可能 | 薬学的管理・指導の実施が必要 |
主な目的 | 処方設計の見直し・共同指導 | 薬学的評価・服薬管理支援 |
4.どのような患者で活用しやすいのか
この制度は、すべての在宅患者について定期的に算定するものではありません。
特に、次のような患者で同時訪問の意義が大きいと考えられます。
多剤服用が続いている患者
複数の慢性疾患があり、内科、整形外科、精神科などから多数の薬が処方されている患者です。
薬剤師が重複や相互作用を整理し、医師が治療上の優先順位を判断することで、安全な減薬につながる可能性があります。
大量の残薬がある患者
薬局からは定期的に薬が届けられている一方で、自宅には数週間分、数か月分の薬が残っているケースです。
飲めていない原因を確認し、処方日数、服用回数、一包化、剤形などをその場で見直せます。
認知機能が低下している患者
本人が服薬状況を正確に説明できず、家族や介護者も管理に困っている場合です。
薬を減らすだけでなく、服薬カレンダーや薬箱、訪問看護との役割分担などを含めた管理方法を検討できます。
嚥下機能が低下している患者
錠剤が飲みにくい、口の中に残る、自己判断で錠剤を砕いているといった患者では、剤形変更や簡易懸濁法の適否などを検討できます。
副作用が疑われる患者
眠気、ふらつき、便秘、食欲低下、低血圧などについて、疾患による症状なのか、薬剤の影響なのかを医師と薬剤師が共同で評価できます。
5.同時訪問の実務フロー
STEP1 対象患者を抽出する
医療機関と薬局で、次のような患者を候補として抽出します。
6種類以上の内服薬がある
残薬が多い
飲み間違いがある
最近ふらつきや転倒が増えた
服薬拒否がある
家族から服薬管理の相談がある
腎機能や肝機能が低下している
複数医療機関から処方を受けている
薬剤数だけで機械的に決めるのではなく、同時訪問によって改善が期待できる患者を選ぶことが重要です。
STEP2 算定資格を双方で確認する
訪問前に、医療機関と薬局がそれぞれ算定要件を確認します。
特に確認すべき項目は次のとおりです。
医療機関が在宅時医学総合管理料を算定しているか
医師が対象患者の主治医か
薬剤師が訪問薬剤管理指導等を行っているか
個人宅への訪問に該当するか
前回算定から6か月経過しているか
同日算定できない点数がないか
自院退院後1か月以内ではないか
STEP3 患者・家族へ説明し同意を得る
同時訪問の目的を、患者や家族に分かりやすく説明します。
「薬を無理に減らすためではなく、現在の薬が生活に合っているか、医師と薬剤師が一緒に確認するための訪問です」
このような説明を行うことで、「薬を取り上げられるのではないか」という患者の不安を軽減できます。
STEP4 訪問前に情報を共有する
医師と薬剤師は、訪問前に確認事項を整理しておきます。
現在の処方一覧
他院からの処方
検査値
腎機能・肝機能
過去の副作用
残薬情報
服薬管理者
介護サービスの利用状況
訪問看護やケアマネジャーからの情報
STEP5 患家で薬の現物を確認する
処方記録だけでなく、自宅にある薬そのものを確認します。
冷蔵庫、食卓、寝室、薬箱など、複数の場所に薬が分散しているケースもあります。
STEP6 その場で医師と薬剤師が協議する
確認結果を踏まえ、次の対応を検討します。
中止・減量
処方日数の短縮
服用回数の変更
服用時点の変更
剤形変更
一包化
残薬を利用した日数調整
家族や訪問看護への管理依頼
次回確認日の設定
STEP7 記録と情報共有を行う
診療録・薬歴に、それぞれの立場から必要事項を記録します。
ケアマネジャーや訪問看護師など、服薬管理に関係する職種にも、患者の同意と必要性に応じて変更内容を共有します。
6.算定で間違えやすいポイント
「同じ日」だけでは足りない
医師が午前、薬剤師が午後に訪問しただけでは、原則として今回の「同時訪問」の趣旨とは異なります。
患家で医師と薬剤師が直接協議し、共同して対応する必要があります。
薬剤師が同行しただけでは算定できない
名刺交換や診察の見学だけでは不十分です。
残薬、服薬状況、副作用、剤形、用法などについて薬学的評価を行い、患者への指導や医師との協議を行う必要があります。
すべての在宅患者が対象ではない
医科側では在宅時医学総合管理料の算定、薬局側では対象となる訪問薬剤管理指導等の実施などが必要です。
医師と薬剤師で算定回数を管理する
双方とも6月に1回の点数です。
医療機関と薬局で別々に管理していると、前回算定日が分からなくなる可能性があります。共有できる管理表を用意すると安全です。
施設患者へ一律に算定しない
薬局側の対象患者は個人宅への訪問に限定されています。
施設における一斉訪問について、安易に算定対象と判断しないことが必要です。
「処方変更なし」の理由も記録する
処方変更がなくても医科側は算定できますが、何も検討していないという意味ではありません。
確認・協議した結果、現状維持が適切と判断した経緯を記録しておきましょう。
7.記録文の例
医療機関・診療録の記載例
患者および家族の同意を得て、訪問薬剤管理指導を担当する〇〇薬局の薬剤師と患家を同時訪問した。自宅内の残薬、実際の服薬状況、服薬管理方法および副作用の有無を共同で確認した。夕食後薬について週2~3回の飲み忘れが認められたため、薬剤師と協議し、服用時点を朝食後へ変更した。患者および家族へ変更理由と服用方法を説明した。
処方変更を行わなかった場合
医師・薬剤師で残薬、服薬状況、副作用および管理方法を確認した。残薬はなく、家族による服薬管理も適切に行われていた。現行処方による症状コントロールは良好であり、有害事象も認めないことから、処方変更は行わず継続する方針とした。
薬局・薬歴の記載例
主治医と患家を同時訪問。患者・家族の同意取得済み。薬剤の保管状況、残薬、服用状況を確認した。夕食後薬の飲み忘れが複数回認められたため、主治医へ服用時点の変更を提案。協議の結果、朝食後へ変更となった。変更後の服用方法を患者・家族へ説明し、次回訪問時に服薬状況を確認する。
※実際の記録は、通知、疑義解釈、各医療機関・薬局の運用基準に沿って作成してください。
8.よくある質問
Q1.医師と薬剤師の両方が算定できますか?
一定の要件をそれぞれ満たせば、医療機関側は訪問診療薬剤師同時指導料300点、薬局側は訪問薬剤管理医師同時指導料150点を算定する仕組みです。
ただし、双方の算定要件は完全に同じではありません。
Q2.薬を減らさなかった場合も算定できますか?
医療機関側については、医師と薬剤師が協議した結果、処方内容を変更しなかった場合でも算定可能であることが明記されています。
ただし、実際に服薬状況等を確認し、共同で検討した記録が必要です。
Q3.薬剤師がオンライン参加しても算定できますか?
公式資料では、医師と薬剤師が患家に同時に訪問することが要件として示されています。オンライン参加のみで算定できるとは示されていません。
Q4.施設入居者も対象ですか?
薬局側の訪問薬剤管理医師同時指導料については、個人宅への訪問に該当する患者が対象です。
施設入居者だから一律に対象外・対象内と判断するのではなく、単一建物居住者数や算定している指導料を確認する必要があります。
Q5.毎月算定できますか?
できません。医療機関側、薬局側ともに6月に1回です。
Q6.処方箋を変更することが目的ですか?
必ずしも変更することが目的ではありません。
患者の生活実態を確認し、現在の処方が安全で適切かを、医師と薬剤師が共同で評価することが目的です。
9.この改定が在宅医療をどう変えるのか
今回の新設は、単なる同行訪問への加算ではありません。
在宅医療における薬剤管理を、
「薬剤師が問題を発見して後日医師に報告する仕組み」から、「医師と薬剤師が患者宅で同時に確認し、その場で判断する仕組み」へ変える改定
といえます。
特に、ポリファーマシー、残薬、副作用、服薬困難といった問題は、処方箋や電子カルテを見るだけでは把握できません。
患者の自宅で薬の現物と生活状況を確認し、医学的判断と薬学的判断をその場で組み合わせることに、この制度の本当の価値があります。
一方、6か月に1回という算定制限があり、日程調整や情報共有にも手間がかかります。
そのため、単なる増収策として全患者に実施するのではなく、同時訪問による改善効果が高い患者を適切に選ぶ運用が求められます。
まとめ
令和8年度診療報酬改定では、医師と薬剤師が在宅患者を同時訪問する取組について、次の2つの評価が新設されました。
医療機関側:訪問診療薬剤師同時指導料 300点
薬局側:訪問薬剤管理医師同時指導料 150点
いずれも原則として6月に1回
患者・家族等の同意が必要
医師と薬剤師が患家へ同時に訪問する
残薬、服薬状況、副作用、剤形、用法などを共同で確認する
医科側は処方変更がなくても算定可能
薬局側は対象患者や同日算定不可項目に注意する
在宅医療の質を高めるためには、医師が処方し、薬剤師が届けるだけでは十分ではありません。
患者が自宅で実際に薬を飲めているのか。その薬が現在の身体状態や生活に合っているのか。
医師と薬剤師が同じ場所、同じ時間に患者と向き合うことで、初めて見えてくる問題があります。
今回の改定は、医師と薬剤師の連携を形式的な情報交換から、患者宅での共同意思決定へ進化させる重要な一歩といえるでしょう。
