大規模災害時の保険診療・診療報酬の取扱いが事前ルール化|厚生労働省通知のポイント

厚生労働省保険局医療課から、「災害発生時における保険診療関係等及び診療報酬の取扱いについて」の通知が示されました。
これまで、大規模な地震や豪雨などの災害が発生した際には、災害ごとに厚生労働省が通知を発出し、保険診療や診療報酬の特例的な取扱いを決めていました。
今回の通知では、一定の条件を満たす大規模災害について、個別の通知が発出されるのを待たなくても、あらかじめ定められた特例的な取扱いを適用できる仕組みが示されています。
医療機関、薬局、訪問看護ステーションにとって、災害発生直後の医療提供を円滑に行うための重要なルール変更といえます。
これまでとの大きな違い
従来は、大規模災害が発生すると、その都度、厚生労働省から災害ごとの通知が出され、その内容を確認して対応する必要がありました。
しかし大規模災害では、発災直後から多数の患者への対応や被災地への医療支援が必要になります。
そこで今回、
一定の基準を満たす災害であれば、厚生労働省から個別通知が出る前でも、あらかじめ決められた取扱いを適用できる
ことになりました。
つまり、災害医療における初動をより迅速にすることが目的です。
対象となる医療機関等
今回の取扱いの対象になるのは、主に次の施設です。
保険医療機関
保険薬局
指定訪問看護ステーション
ただし、すべての災害やすべての地域で自動的に適用されるわけではありません。
通知で定められた3つの条件をすべて満たす必要があります。
条件① 対象となる災害
対象となるのは、日本DMAT活動要領に定められている
「DMAT自動待機基準」が適用される災害
です。
DMATとは「災害派遣医療チーム(Disaster Medical Assistance Team)」のことで、大規模災害や多数の傷病者が発生した際に活動する専門的な医療チームです。
そのため、小規模な災害すべてが対象になるわけではなく、一定規模以上の災害を想定した制度となっています。
条件② 対象となる地域
対象地域については、内容によって大きく2つに分かれます。
被災者の受入れ・被災地への職員派遣
被災者を受け入れたり、被災地へ医療スタッフ等を派遣したりしたことによって適用される特例については、
DMAT自動待機基準によりDMAT指定医療機関が待機する地域
が対象となります。
重要なのは、職員派遣については必ずしもDMATとして派遣される必要がない点です。
対象地域にある医療機関等が、
災害支援のために被災地へ職員を派遣した場合
にも対象となる可能性があります。
実際の被災地
その他の一部の取扱いについては、
実際に災害が発生した地域
特別警報が発表された地域
が「被災地」として対象になります。
また、被災した医療機関等に対する特例については、当然ながら実際にその医療機関や薬局などが被災していることが条件となります。
条件③ 原則として災害発生月+翌月まで
今回の特例的な取扱いには適用期間も定められています。
原則として、
「災害が発生した月」と「その翌月」
が対象です。
例えば、8月20日に対象となる大規模災害が発生した場合には、原則として
8月と9月
が対象期間となります。
その後も特別な取扱いを継続する必要がある場合には、厚生労働省が個別に取扱いを定めることになります。
一部の取扱いは災害による事情が終了するまで継続
すべての特例が翌月末で終了するわけではありません。
通知では、一部の項目について、
「災害による事情が終了するまで」
適用するとされています。
そのため、被災状況や医療提供体制によっては、災害発生月と翌月を超えて特例が続くケースもあります。
医療機関にとって重要なポイント
今回の通知で特に重要なのは、
「災害が起きてから厚生労働省の通知を待つ」という仕組みから、一定の条件を満たせば事前に定められたルールで対応できる仕組みへ変わった
という点です。
大規模災害では、
医療機関自体が被災する
多数の患者が来院する
被災地から患者を受け入れる
医師や看護師などを被災地へ派遣する
通常どおりの診療報酬算定が困難になる
といった事態が短時間で発生する可能性があります。
今回のルール化によって、こうした状況でも医療機関がより早く対応できることが期待されます。
DMATとしての派遣でなくても対象になる点に注意
医療機関にとって特に押さえておきたいのが、被災地への職員派遣です。
通知では、
DMATとして派遣したかどうかにかかわらず、災害支援のために被災地へ職員を派遣した場合
についても、一定の取扱いの対象になるとされています。
医師だけでなく、看護師やその他の医療スタッフを災害支援として派遣する可能性のある医療法人・医療機関は、事前に制度を確認しておくことが重要です。
今後は個別通知にも注意
今回の通知によって基本的なルールは事前に定められましたが、すべてがこの通知だけで完結するわけではありません。
災害の規模や被害状況によっては、厚生労働省から追加の通知が発出される場合があります。
その場合には、今回の通知と追加通知の両方を確認する必要があります。
まとめ
今回の厚生労働省通知のポイントは、次のとおりです。
大規模災害時の保険診療・診療報酬の特例を事前にルール化
一定条件を満たせば個別通知を待たずに適用可能
「DMAT自動待機基準」が適用される災害が対象
被災地域だけでなく、被災者を受け入れる地域なども対象となり得る
DMAT以外の災害支援目的の職員派遣も対象となり得る
原則として災害発生月と翌月が適用期間
一部の取扱いは災害による事情が終了するまで継続
災害によっては追加通知が出されるため確認が必要
大規模災害はいつ発生するかわかりません。
医療機関としては、災害発生後に制度を調べるのではなく、平時から「どのような場合に特例が適用されるのか」を確認し、院内で情報共有しておくことが重要です。
特に被災者の受入れや医療スタッフの派遣を行う可能性のある医療法人・医療機関では、今回の通知内容を事務部門だけでなく、医師・看護師・経営管理部門などでも共有しておくことが望まれます。
※本記事は、ご提示いただいた厚生労働省通知の「1.適用基準」を中心に分かりやすく整理したものです。通知中で参照されている「2~5」の具体的な診療報酬等の取扱いについては、該当部分の原文を確認する必要があります。
