大規模災害時の診療報酬特例|被災者受入れ・職員派遣で医療機関はどうなる?
- 8月27日
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厚生労働省は、大規模災害が発生した際の保険診療や診療報酬について、一定の条件を満たした場合には、個別通知を待たずに特例的な取扱いを適用できる仕組みを示しています。
今回はその中から、
「対象地域の医療機関が被災者を受け入れた場合」
または、「被災地へ医師・看護師などの職員を派遣した場合」に認められる主な取扱いについて解説します。
ポイントは大きく3つです。
被災者を受け入れて病床数を超えても、一定の場合は診療報酬を減額しない
DPC病院についても、通常どおりDPCによる算定を継続できる
被災者受入れや職員派遣で人員配置基準を一時的に満たせなくても、一定の届出を不要とする
医療機関の災害対応を支える重要な特例となっています。
1.被災者の受入れで「許可病床数」を超えても減額しない
通常、病院には医療法上の「許可病床数」が定められています。
例えば、100床の許可を受けている病院が、通常時にその病床数を超えて患者を入院させることは原則として想定されていません。
しかし大規模災害では、多数の負傷者や避難者が発生し、被災地周辺の病院に患者が集中する可能性があります。
そのため、被災者を受け入れた結果として、
医療法上の許可病床数を超えて患者を入院させた場合
については、「災害等やむを得ない事情」として取り扱われます。
この場合、通知で定められた条件に該当すれば、通常行われる診療報酬上の減額措置を適用しないこととされています。
例えば
100床の病院が大規模災害の発生によって多数の被災者を受け入れ、一時的に100床を超えて入院患者を受け入れたとします。
通常とは異なる病床運用になりますが、災害対応として被災者を受け入れたのであれば、一定の条件のもと、
病床数を超過したことだけを理由に診療報酬を減額しない
という考え方です。
災害時に「診療報酬が減額されるから患者を受け入れられない」という事態を防ぎ、医療機関が被災者の受入れを行いやすくするための措置と考えられます。
2.DPC病院も通常どおりDPC算定が可能
DPC対象病院についても特例があります。
DPCとは、急性期病院などで用いられている診療報酬の包括評価方式です。
災害によって被災者を受け入れ、医療法上の許可病床数を超えて入院させた場合でも、対象となるDPC病院では、
従来どおり診断群分類点数表に基づいて診療報酬を算定できる
とされています。
つまり、
「災害によって病床数を超過したからDPC算定ができなくなる」という取扱いにはしない
ということです。
大規模災害では、救急患者や重症患者が短時間に集中することがあります。
そのような非常時にも、DPC病院が診療報酬上の問題を過度に心配することなく患者を受け入れられるよう配慮されています。
3.被災者受入れで患者が急増しても施設基準を柔軟に取り扱う
今回の通知でも特に重要なのが、入院基本料の施設基準に関する特例です。
病院が入院基本料を算定するためには、通常、
医師
看護師
その他の医療従事者
などについて一定の配置基準を満たす必要があります。
また、看護職員の月平均夜勤時間数などについても基準があります。
しかし、大規模災害では通常時と全く同じ医療提供体制を維持できるとは限りません。
例えば被災者を大量に受け入れれば、短期間で入院患者数が急増する可能性があります。
その結果、一時的に通常の施設基準を満たせなくなるケースが考えられます。
4.被災地へ職員を派遣して人員不足になった場合も対象
特例の対象になるのは、被災者を受け入れた病院だけではありません。
医療機関が、
災害支援のために被災地へ医師・看護師などの職員を派遣した結果、自院の職員数が一時的に不足した場合
も対象になります。
例えば、
「被災地支援のため看護師を派遣した結果、自院の夜勤スタッフが通常より少なくなった」
といったケースが考えられます。
災害支援を積極的に行った医療機関が、そのことによって自院の診療報酬上不利にならないよう配慮された仕組みです。
5.月平均夜勤時間数が1割以上変動しても変更届が不要
通常、施設基準に関係する勤務状況などに一定以上の変動が生じた場合には、地方厚生(支)局などへの変更届が必要になることがあります。
しかし今回の通知では、
被災者の受入れによる患者数の一時的な急増
被災地への職員派遣による一時的な人員不足
によって施設基準を満たせなくなった医療機関について、
月平均夜勤時間数に1割以上の一時的な変動が生じても、変更の届出を行わなくてもよい
とされています。
これは医療機関にとって大きなポイントです。
災害発生直後は、患者対応や被災地支援が最優先になります。
そのような中で通常時と同様の届出対応を求めるのではなく、行政手続きを一定程度柔軟化し、医療機関が災害医療に集中できるようにする措置といえます。
なぜこのような特例が必要なのか?
大規模災害が発生すると、医療機関では通常では考えられないような状況が発生します。
例えば、
被災者受入れ↓入院患者が急増↓許可病床数を一時的に超過↓看護配置や夜勤体制にも変化
ということが起こります。
一方、被災地へ医療スタッフを派遣した病院では、
医師・看護師を被災地へ派遣↓自院の職員数が一時的に減少↓通常の施設基準を維持することが難しくなる
という状況も考えられます。
こうした非常時に通常と同じ診療報酬ルールをそのまま適用すると、災害支援に協力した医療機関が不利益を受ける可能性があります。
そこで厚生労働省は、災害時について一定の特例を設けています。
医療機関が押さえておきたい3つのポイント
今回の通知を簡単にまとめると、
① 被災者を積極的に受け入れられる
災害対応として許可病床数を超えて被災者を入院させても、一定の場合には通常の減額措置を適用しません。
② DPC病院も算定を継続できる
災害による超過入院があっても、対象となるDPC病院は従来どおり診断群分類点数表による算定が可能です。
③ 人員不足・夜勤体制の一時的な変化にも配慮
被災者の受入れや被災地への職員派遣によって人員配置などが一時的に変化しても、月平均夜勤時間数の1割以上の変動について変更届を不要とする取扱いがあります。
まとめ
大規模災害時には、平常時と同じ医療提供体制を維持することが難しくなります。
今回示された特例は、
「被災者を受け入れた医療機関や、被災地支援に協力した医療機関が診療報酬上の不利益を受けないようにする」
という点が非常に重要です。
特に病院では、
許可病床数を超えた被災者の受入れ
DPC算定
入院基本料
看護配置
月平均夜勤時間
被災地への医療スタッフ派遣
などが実務に直接関係します。
災害が発生してから制度を確認するのではなく、平時から医事課・看護部・事務部門・経営部門などで今回の取扱いを共有しておくことが重要です。
また、実際の災害では厚生労働省から追加の通知が発出される場合もあるため、最新情報を併せて確認する必要があります。
※本記事は、ご提示いただいた厚生労働省通知「2.対象地域の保険医療機関において、被災者を受け入れたこと又は被災地に派遣したことにより適用される取扱い」の(1)~(3)を分かりやすく整理したものです。実際の診療報酬請求・施設基準の取扱いについては、通知原文および地方厚生(支)局等の最新情報をご確認ください。
