一部保険外「病院、クリニックでもらう薬なのに保険が全部きかない?」OTC類似薬で始まる“新しい患者負担”をわかりやすく解説

「病院で処方された薬なら、当然すべて健康保険の対象」
これまで、そう考えていた方は多いのではないでしょうか。
ところが今後、市販薬との代替性が特に高い医療用医薬品について、薬価の一部を保険給付の対象から外す仕組みが導入される方向です。
厚生労働省の改定案では、
「要指導医薬品又は一般用医薬品との代替性が特に高い薬剤」について、対象となる医療用医薬品の薬価の4分の1を除いた額を、保険外併用療養費の算定対象とする
という仕組みが示されています。
少し難しい表現ですが、ポイントは非常にシンプルです。
対象薬については、薬価の25%相当部分を保険給付の計算から外す仕組みになるということです。

なぜこんな制度がつくられるの?
今回のキーワードは、「要指導医薬品又は一般用医薬品との代替性が特に高い薬剤」です。
つまり、
「ドラッグストアなどで購入できる医薬品と、特に代替性が高い医療用医薬品」
について、これまでと同じように全面的に保険給付の対象としてよいのか、という考え方が背景にあります。
今回の改定案では、こうした薬剤の処方・調剤を新たに「一部保険外療養」として扱う仕組みが示されています。
これまで健康保険には、「保険診療」と「保険外診療」を組み合わせることができる「保険外併用療養費」という仕組みがありました。
今回、その枠組みの中に、市販薬との代替性が特に高い医療用医薬品が加えられる形になります。
最大のポイントは「薬価の4分の1」
改定案で最も重要なのが、この部分です。
対象となる医療用医薬品の薬価の4分の1を控除する
とされています。
たとえば、制度の考え方を単純化して、薬価が1,000円の対象薬があったとします。
薬価の4分の1は、
1,000円 × 25% = 250円
です。
この250円部分を除いた750円分を基礎として保険部分を計算する、というのが今回示されている仕組みです。
つまり、
「薬価の25%分について、これまでと同じ保険給付の扱いをしない」
という大きな変更になります。
ここは「患者の自己負担率が25%になる」という意味ではありません。
通常の健康保険の自己負担とは別に、薬価の一部が保険給付の計算から外れる仕組みである点が重要です。
「全部自費になる」わけではない
ここは誤解されやすいところです。
対象になった薬が、突然100%自費になるわけではありません。
今回の改定案は、「保険外併用療養費」という制度を利用して、
通常の診察など、保険診療として扱われる部分
対象薬のうち保険給付から外される部分
を組み合わせて診療できるようにするものです。
つまり、従来のような「保険か自費か」の完全な二択ではなく、1回の診療の中に保険部分と保険外部分が存在するという仕組みです。
この点が今回の制度の大きな特徴です。
病院でもらった薬なのに「保険外」が発生する時代へ
患者さんにとって最もインパクトが大きいのはここかもしれません。
これまでは、「病院を受診して、医師が処方した薬」というだけで、基本的には保険診療というイメージがありました。
しかし今回の仕組みでは、
医師から処方された医療用医薬品であっても、その薬の一部について保険外の負担が生じる可能性があります。
つまり今後は、「処方薬か市販薬か」だけではなく、
「その医療用医薬品が保険給付の対象としてどこまで認められているのか」
まで患者さんが意識する時代になっていく可能性があります。
実は「先発医薬品の選定療養」と似た考え方も
現在の制度にも、一部似た仕組みがあります。
改定案の表には、後発医薬品が存在する場合に先発医薬品を選択した際の取扱いも記載されています。
つまり、
「すべてを保険から外すのではなく、一定部分だけを保険外として患者さんが負担し、それ以外は保険診療として扱う」という考え方です。
今回、市販薬との代替性が特に高い薬剤についても、**「一部保険外療養」**という新しい区分を使って同様に保険診療と保険外負担を組み合わせる仕組みが設けられることになります。

クリニック・薬局にも大きな影響
この制度は、患者さんだけの問題ではありません。
医療機関や薬局にとっても、かなり大きな制度変更になる可能性があります。
特に現場では、「この薬は追加負担が発生します」「なぜ以前より薬代が高くなったのですか?」
「市販薬を購入した方が安いのですか?」といった質問が増えることが予想されます。
そのため、実際に制度が運用される際には、対象となる医薬品、算定方法、患者さんへの説明方法などを医療機関・薬局側が正確に把握することが非常に重要です。
すべての市販薬類似薬が自動的に対象になるわけではない
ここも重要です。今回示された改定案では、「別に厚生労働大臣が定める医薬品」
の薬価を基準として4分の1を控除する仕組みになっています。
つまり、「市販薬と似ているから全部対象」という単純な制度ではありません。
実際にどの医薬品が対象になるのかは、厚生労働大臣が定める対象薬の範囲を確認する必要があります。
したがって、患者さん自身が「これは市販薬と同じような薬だから保険外だ」と判断するのではなく、実際の対象薬や制度上の条件を確認することが大切です。
なぜ今「OTCに近い薬」が注目されているのか
日本の健康保険制度では、病気やけがの治療を社会全体で支える「国民皆保険」が大きな役割を果たしています。
一方で、「市販薬として購入できる医薬品と非常に近い薬まで、どこまで公的医療保険でカバーするのか」という問題は、今後の医療保険制度を考えるうえで大きなテーマになります。
今回の改定案は、必要な医療について保険診療を維持しながら、一部の薬剤について患者負担とのバランスを変更するという制度設計の一つと見ることができます。
患者さんが覚えておきたい3つのポイント
今回の制度については、細かな法律の文章を覚える必要はありません。
まずは次の3点を理解しておけば十分です。
市販薬との代替性が特に高い一部の医療用医薬品が対象になる
対象薬は全部自費になるのではなく、一部だけ保険外になる
今回の改定案では、薬価の25%相当部分を保険給付の算定から外す仕組みが示されている
特に重要なのは、
「病院で処方された薬=すべて従来どおり保険適用」ではなくなる可能性がある
という点です。
まとめ|医療保険は「薬を出せば全部保険」の時代から変わる?
今回の改定案は、一見すると「薬価の4分の1」という小さな変更に見えます。
しかし制度的にはかなり大きな意味があります。
なぜなら、
保険診療として処方される医療用医薬品の一部について、患者さんが保険外の費用を負担する仕組みが新たに設けられるからです。
今後重要になるのは、
「どの薬が対象になるのか」
「実際の患者負担はいくらになるのか」
「どのような場合に対象外になるのか」
といった具体的な運用です。
制度が実際に始まれば、クリニックや薬局の窓口で患者さんから質問される機会も増えてくるでしょう。
医療機関側にも、単に「追加料金がかかります」と伝えるのではなく、なぜ負担が生じるのか、保険診療部分と保険外部分がどう分かれているのかを、分かりやすく説明することが求められます。
今回の制度は、これからの日本の医療保険のあり方を考えるうえでも、非常に注目すべき変更といえそうです。

