【令和8年度診療報酬改定】特定機能病院等紹介患者受入加算は「紹介状」が必要?疑義解釈その12をわかりやすく解説
- 3 日前
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令和8年度診療報酬改定で新設された「特定機能病院等紹介患者受入加算」について、厚生労働省から重要な疑義解釈が示されました。
今回のポイントは非常にシンプルです。
大病院から患者を紹介されたというだけでは、必ずしも算定できません。
厚生労働省は今回、
紹介元医師からの診療情報を示す文書が必要
電子的に送られた診療情報でもよい
地域の医療機関で継続的に治療管理することが前提
単回のMRI・CTなど「検査だけ」の紹介は原則として対象にならない
という考え方を明確にしました。
クリニックや200床未満の病院にとっては、受付・医事課・医師まで含めて確認しておきたい内容です。
特定機能病院等紹介患者受入加算とは?
令和8年度診療報酬改定では、新たに
「特定機能病院等紹介患者受入加算 60点」
が新設されました。
対象となるのは、原則として
診療所または許可病床数200床未満の病院
です。
こうした地域の医療機関が、一定規模以上の病院などから患者の紹介を受けて初診を行った場合に、初診料へ60点を加算する仕組みです。
紹介元として想定されているのは、
特定機能病院
一定規模以上の地域医療支援病院
一定規模以上の紹介受診重点医療機関
一定の要件を満たす400床以上の病院
などです。
この制度の背景には、大学病院や大規模病院に患者が集中するのではなく、病状が安定した患者などについては地域の診療所や中小病院へ「逆紹介」し、地域全体で患者を診ていこうという国の方針があります。
つまり、
「大病院でなければできない医療は大病院で、日常的・継続的な診療は地域の医療機関で」
という医療機関の役割分担を診療報酬でも後押しする制度と考えるとわかりやすいでしょう。
疑義解釈その12で何が明確になったのか?
今回示された質問は、
特定機能病院等紹介患者受入加算を算定するためには、紹介状による紹介を受ける必要があるのか。
というものです。
厚生労働省の回答を実務的に読み解くと、重要なのは次の3点です。
①「紹介された」という事実だけでは足りない
紹介元となる病院の医師が、
「この患者について、他の医療機関で診療する必要がある」
と判断したうえで紹介している必要があります。
さらに、
患者の診療状況を示す文書
が添えられていることが求められています。
したがって、
「大学病院から来ました」
「○○病院の先生にこちらを受診するよう言われました」
と患者本人から説明があっただけでは、加算算定の根拠としては不十分と考えるべきでしょう。
② 紙の紹介状でなくてもよい
ここは医療DXを進めるうえでも重要です。
厚生労働省は、
診療状況を示す文書には、電子的に送付されたものも含まれる
としています。
つまり、必ずしも患者が紙の診療情報提供書を持参しなければならないわけではありません。
医療機関間で適切に電子送付された診療情報についても対象となります。
今後、医療機関間の情報連携が電子化されていけば、
「紙の紹介状を患者が持ってくる」から「医療機関同士で診療情報を共有する」
という形へさらに変わっていく可能性があります。
③ 最大のポイントは「継続的な治療管理」
今回の疑義解釈で最も重要なのがここです。
厚生労働省は、この加算について、
複数回の受診を通じた継続的な治療管理を前提とした紹介
であることを明確にしています。
つまり、大病院から地域のクリニックへ、
「今後はこちらで高血圧の管理をお願いします」
「症状が安定したので、今後の定期診療をお願いします」
「術後は地域の先生に継続して診てもらってください」
といった形で患者が紹介されるケースが、本来想定されていると考えられます。
一方で、
一度診察して終わり
という患者は、制度の趣旨から外れる可能性があります。
MRI・CTなど「検査だけ」の紹介では算定できない
今回、厚生労働省はさらに踏み込んでいます。
具体的に、
「単回の画像検査のみを目的とした紹介等、その後の継続的な診療を予定していない場合は該当しない」
と示しました。
これは画像診断装置を設置しているクリニックなどでは、特に注意が必要です。
例えば、
算定対象にならないと考えられる例
大学病院↓「MRI検査だけお願いします」↓地域のクリニックでMRI↓患者は大学病院へ戻る
このように、
検査を1回行うだけ
で、その後の診療を地域のクリニックで行わない場合は、この加算の対象にはならないということです。
では「MRIを撮って、その後も診療する場合」はどうなのか?
ここは今回の疑義解釈を読むうえで非常に重要です。
厚労省が対象外としているのは、
「単回の画像検査のみを目的とした紹介」
であり、
「その後の継続的な診療を予定していない場合」
です。
逆に考えると、
大病院から患者が紹介され、
地域の医療機関でMRIなどの検査も行いながら、
診断
投薬
経過観察
定期受診
生活習慣病管理
慢性疾患管理
などを継続して行うのであれば、「単なる検査目的の紹介」とは意味が異なります。
重要なのは、
MRIを撮ったかどうかではなく、「その患者をその後も地域の医療機関で診療していく紹介なのか」
という点です。
「紹介状があれば算定」ではないことに注意
今回の疑義解釈を一言でまとめるなら、
「紹介状の有無だけで判断してはいけない」
ということです。
紹介状が存在していても、その内容が
「MRI撮影をお願いします」
「CT検査をお願いします」
「○○検査を実施して結果を返してください」
という検査依頼だけで、その後は紹介元病院で診療を継続するのであれば、特定機能病院等紹介患者受入加算の対象とはならないと考えられます。
一方、
「今後の高血圧管理をお願いします」
「今後の定期診療をお願いします」
など、
患者の診療そのものを地域医療機関へ引き継ぐ趣旨
が読み取れる紹介であることが重要になります。
クリニックの受付・医事課では何を確認すればいい?
今後、特定機能病院等紹介患者受入加算を算定する医療機関では、次のような確認体制を作っておくことが重要でしょう。
① 紹介元医療機関を確認する
まず、紹介元が加算の対象となる特定機能病院等に該当するか確認します。
単に「病院から紹介された」というだけでは判断できません。
② 初診に該当するか確認する
この加算は「初診」を評価するものです。
そのため、初診料の算定要件と合わせて判断する必要があります。
③ 診療情報を示す文書を確認する
紙の診療情報提供書だけでなく、電子的に送付された診療情報も含まれます。
紹介を受けた根拠となる情報が確認できる状態にしておくことが重要です。
④ 紹介目的を確認する
ここが今回もっとも重要です。
紹介目的が、
「今後の継続診療」なのか
それとも
「MRI・CTなどの単発検査」なのか
を確認します。
⑤ カルテにも紹介目的を残す
レセプト審査や個別指導などを考えると、
「○○病院より今後の継続治療目的に紹介」
など、紹介を受けた経緯や今後の診療方針がカルテ上でも確認できる状態にしておくことは重要です。
単に加算を入力するだけではなく、
なぜこの患者について加算したのか説明できる記録
を残しておくべきでしょう。
今回の疑義解釈から見える厚労省の狙い
今回の疑義解釈は、単なる算定ルールの説明以上の意味を持っていると考えます。
厚生労働省が評価したいのは、
「大病院から患者が来たこと」ではありません。
評価したいのは、
「大病院が担っていた患者の診療を、地域の医療機関が継続して担うこと」
です。
ここは非常に大きな違いです。
大学病院などに患者が集中すると、
専門医療が必要な患者を十分に診られない
外来待ち時間が長くなる
大病院勤務医の負担が増える
高度医療を担う病院と地域医療の役割分担が進まない
といった問題が生じます。
そこで国としては、
大病院↓地域の診療所・中小病院↓必要になれば再び大病院
という循環を作りたいわけです。
今回新設された60点は、その「患者を地域で受け止める機能」を評価する診療報酬と考えることができます。
今後、「逆紹介を受けられるクリニック」が重要になる
令和8年度診療報酬改定では、大病院と地域医療機関の役割分担がこれまで以上に強く意識されています。
今後のクリニック経営では、
「患者を集める」だけではなく、「基幹病院から患者を受け入れられる体制を作る」
ことも重要になるでしょう。
例えば、
大学病院との病診連携
地域医療支援病院との連携
紹介受診重点医療機関との連携
電子的な診療情報共有
紹介患者の予約枠確保
紹介患者の継続的な治療管理
必要時に大病院へ再紹介できる体制
などを整備することで、地域医療におけるクリニックの存在価値はさらに高まります。
ドクターエージェントの考察
今回の疑義解釈で特に注目したいのは、
「単回の画像検査だけでは認めない」
という点です。
これは、国がこの加算を単なる「紹介患者に対する初診料の上乗せ」と考えていないことを示しています。
重要なのは、
患者の治療を大病院から地域へ実際に移すこと
です。
したがって今後は、
「何件紹介患者が来たか」
だけではなく、
「そのうち何人を地域で継続的に診療できているか」
という考え方がより重要になる可能性があります。
クリニック側としても、紹介患者を単発患者として扱うのではなく、
「この患者について、当院はどこまで診療を引き継ぐのか」
を紹介元医療機関と明確にしていくことが求められます。
特にMRIやCTなど高度な検査設備を持つクリニックでは、
「検査受託」と「逆紹介による継続診療」を院内で明確に区別する
ことが、レセプト請求上も非常に重要になるでしょう。
まとめ
今回の疑義解釈その12によって、「特定機能病院等紹介患者受入加算」の算定条件がより明確になりました。
重要なのは次の点です。
① 対象となる特定機能病院等からの紹介であること
② 紹介元医師による診療情報を示す文書があること
③ 電子的に送付された診療情報でも認められること
④ 地域の医療機関で継続的な治療管理を行うことが前提であること
⑤ MRI・CTなど単回の検査だけを目的とした紹介は対象にならないこと
つまり、
「紹介状がある=60点算定できる」ではありません。
判断の核心は、
「大病院から地域の医療機関へ、患者の継続診療が実質的に引き継がれているか」
という点にあります。
今後、地域の診療所・中小病院には、大病院からの逆紹介患者を適切に受け入れ、必要に応じて再び専門医療へつなぐ「地域医療のハブ」としての役割が、ますます求められていくでしょう。
